遊びのイメージをつくる、ゲームと世界観の話
はじめに
この記事は【その1】ドリコム Advent Calendar 2015 - Adventar の 23 日目です。
22 日目は Fuya さんによる Web Starter Kitからはじめるモダンなウェブサイト制作 (201512版) でした。
【その1】ドリコム Advent Calendar 2015 - Adventar
【その2】ドリコム Advent Calendar 2015 - Adventar
自己紹介
はじめまして、 wagi です。前回の Fuya さんと同じく、今年ドリコムに新卒入社しました。社内では、何故かにゃん付けで わぎにゃん なんて呼ばれています。
新人ゲームデザイナーとして、ゲームの運営や企画をしています!
ゲームはシステムだけじゃイメージできない
突然ですが、「最近遊んでいるゲーム」という話題でこんな話をされたとします。
「このゲームはキャラクターを操作して、敵キャラクターと戦います!」
「うまく攻撃して敵を倒せると、報酬が獲得できます!」
「どうです!楽しそうじゃないですか!?」
どうです!…と言われても、正直ピンとこないと思います。
これだとhogeをhogeするとhogeになる…というゲームのシステムの説明しかしていません。そのため、聞いた人には何と戦うのか、どういう状態で戦うのか、何を目的にして戦うかがさっぱり分からず、頭の中で実際に遊ぶイメージがつきません。
これがもし、
「あなたはハンターとしてフィールドの原生生物を狩ります!」
「うまく狩りを成功させて、肉や毛皮を手に入れて生活しましょう!」
「どうです!楽しそうじゃないですか!?」
こうだったら、すごく分かりやすいと思います。
先ほどと同じ内容を指していても、どんな世界で何を目的に何をするのかがハッキリしていて、遊びのイメージがしやすくなりました。こんな風に、ゲームにおける"世界観"と呼ばれるものには、実際に行う遊びのイメージをしやすくする効果があると思います。
この「遊びのイメージのしやすさ」というのが重要で、先ほどの話は某タイトル*1を話題に出した…という例なのでまだマシでした。しかしこれがまだ企画段階での話の場合、自分の考えたゲームはまだ自分の頭の中にしか存在しません。頭の中にある新しいゲームの楽しさを人に伝えることは非常に難しいですが、当然ながらゲームにはそれを実際に遊ぶ人がいるので、一緒に作る人にすら楽しさが伝わらないものを実際に作る訳にはいきません。
せっかく最高に楽しいと思ったゲームなのに、それを誰とも共有できないのは非常にもったいないです。
そこで、
- 遊びをイメージしやすくする世界観ってどうすれば作れるんだろう?
- 遊びがイメージしやすいゲームを考えるために、何をどうすればいいんだろう?
みたいなことを、新人なりにまとめてみました。「ヒヨッコが何か言ってるぜHAHAHA」とお付き合いいただければ幸いです。
ゲームの要素を分解し、その繋がりを整理する
ゲームから世界観を決めるために、初めにやることはこの2つです。
- ゲームの中にどんな要素があるかを整理して、(要素の分解)
- それらの要素がどんな繋がり方をしているか理解する(構造の理解)
…それこそピンとこないと思うので、さきほどの例を用いて実際にやってみます。
「このゲームはキャラクターを操作して、敵キャラクターと戦います!」
「うまく攻撃して敵を倒せると、報酬が獲得できます!」
まずは、これを図にまとめてみました。本当のゲームはもっと複雑なんだと思いますが、ひとまず、ざっくり…
この図から、このゲームには「プレイヤー」「敵」「報酬」という3つの要素があって、それらがどんなことによって繋がっているのか、その全体の構造が分かります。*2
そのゲーム構造に近いモチーフを探す
次に、さきほど分かった構造に近い構造を持つ、なにか別の物事が無いか探します。例えば、人類が昔から行っていた「狩り」という行動が、非常に近しい構造を持っていそうです。さきほどと同様に、狩りの構造を図解してみます。
…ほとんど使い回しですが、「狩り」の要素と構造を整理するとこんな感じでしょうか。この「狩り」という行動の構造が、先ほど整理したゲームの構造と非常に近いことが分かります。これがどういうことかと言いますと、このゲームでやっていることは、「狩り」というモチーフに例えることが出来るということです。
…という訳で、ゲームの構造に対して「狩り」というモチーフを設定することが出来ました。あとはこのモチーフに従って、
「プレイヤーとは、敵とは何者か?報酬とは何か?」
「攻撃の仕方は?プレイヤーはどうやって報酬を得るのか?」
といった各要素の定義や接続の仕方を考えていけば、そのゲームがどんな世界の上で成り立っているべきなのか、その世界観が見えてくるはずです!
ただ、物事からモチーフを設定する作業は、世の中の様々な物事の構造を理解していて、かつそのストックが頭の中に大量にあることが前提になります。そのストックを作るために、日頃からそういう視点で物事を捉え続けることが大事なんですね…。
モチーフ・世界観からゲームを考える
ところで「今のは既存のゲームから既存の世界観を作った話なんだから、後から何とでも言えるだろ!」というツッコミが飛んできそうです。
実際その通りなんですが、この要素の分解と構造の理解ができれば、ゲームから世界観を考えるだけでなく、逆に世の中の様々なモチーフや世界観からゲームを考えることも可能なんじゃないかな…と思っています。
発想の原点がゲームにしろ、モチーフや世界観にしろ、
- 発想の原点となった物事を要素に分解し、
- その物事の構造を理解し、
- 必要であれば特に重要な部分を抜き出して、
- ゲームや世界観として、その構造を再現する
…というプロセスを同じように辿ることができると思います。
この図のように、最終的にゲーム・モチーフ・世界観で一貫した構造が出来ていれば、どこから考え始めても成り立つ…ような気がしました。
むしろモチーフや世界観からゲームを考える場合は、自然とモチーフや世界観を説明できるゲームになるので、ゲームから考え始めるよりもずっとイメージしやすいものが出来上がるかもしれません。
まとめ
- ゲームと世界観を一緒に考えると説明しやすくなる
- ゲームと共通の構造を持つ物事をモチーフにすると、世界観を決めやすくなる
- 日頃から様々な物事を構造で理解し、モチーフとして使えるようにしておくべき
- ゲームと世界観のどちらが先でも、やることは同じ
ちなみに要素という言葉は非常に曖昧ですが、僕の場合は「その世界の根底に存在する価値観」や、「受け手に感じてほしい気持ち」なども、要素のひとつとして見てしまいます。*3
それらを実現するためには、どんな遊びがあればいいのか、どんな世界があればいいのかを定義し作り上げる…。そんな楽しいお仕事をさせていただいております!
最後に
僕の所属しているゲームデザイン部では「物事を抽象的に捉えよう!」とよく言われます。世の中の物事の要素を分解、構造を理解して、自分のものとして応用できる…というのが、ゲーム作りでは必要なんですかね。
もっとたくさんの経験を積んで、よりよい楽しさをお届けできるように頑張ります!
明日は
明日は Sasasaki さんです!